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矢作理彩子 個展

「Reflection of Life - Beyond The Light of Glass」

2025年3月18日~4月6日
11:00~18:00、月曜定休

 

ギャラリーG-77で開催される本展は、大阪を拠点に活動する矢作 理彩子のガラス彫刻を回顧する個展であり、光、物質性、そして変容をテーマにしている。彼女は透明性と不透明性のバランスを探求し、光を用いて形と知覚を構築する。彼女の抽象的な作品は鑑賞者の視点によって表情を変え、影と輝きが動的に作用することで新たな表現を生み出す。

矢作はキルンキャスティングを主な技法とし、電気炉の中でガラスを成形して作品を制作する。彼女の作品には純粋なガラスのみで構成されたものもあれば、銀、銅、絹などの素材を埋め込むことで、キャスティングプロセスに複雑さを加えたものもある。これらの要素はガラスと相互作用し、光と奥行きを変化させ、作品のコンセプトを強調する。

 

Reflection of Life – Beyond the Light of Glass というタイトルは、矢作が彫刻を通じて経験や感情の移ろいを探求していることを表している。彼女は個人的な思索、一瞬の出来事、自然現象から着想を得て、光、透明性、影を用い、記憶、変化、無常を抽象的に表現する。各作品は、鮮明な瞬間や変化の過程、そして知覚を形作る目に見えない力をとらえている。本展ではさまざまなシリーズを通じて、ガラスがどのように光を保持し、拡散し、操作するのかを探求し、それによって彼女の知覚と変容に関する考えを表現する手段となっている。

 

彼女の作品は、装飾的でも機能的でもなく、ミニマリズムやコンセプチュアルアートの言語を取り入れ、形と素材の相互作用を重視する。ガラスの持つ本質的な光、影、奥行きに焦点を当て、固定されたオブジェではなく、光や透明性によって変化し続ける構成物として存在している。矢作は制作の要素を根源的な部分へと削ぎ落とすことで、経験や感情、そして無常の美しさをとらえ、鑑賞者が単にオブジェそのものではなく、光と知覚の儚い相互作用を体感できるようにしている。

 

Dreamy Silk Drifting in Glass シリーズでは、矢作は絹に「声」を与え、ガラスに閉じ込めることで儚さと永続性の繊細なバランスを表現する。彼女は絹という自然素材と、古代から存在するガラスとの関係を探求し、透明性と層の重なりを通じて奥行きと動きを生み出している。絹の糸がまるで意思を持って漂っているかのように表現し、その儚さをガラスの中に留めることで、浮遊し、時間の中に静止したかのような印象を与える。蚕が繭を紡いだ後、職人たちは手作業で糸を染め、布地が作られる。しかし、その過程で細かな糸は破棄され、職人技の精緻さとともに消え去ってしまう。蚕の犠牲と人間の技によって生み出される絹は、自然と人間の知恵の相互依存を象徴する。矢作はこれらの繊維をガラスに閉じ込めることで、自然と人間の営みが共存するメタファーを作り出し、捨てられた絹の糸が光と透明性の中に留まり続けることを可能にしている。

 

Deep in The Light は、矢作のこれまでの探求をさらに発展させ、色彩と形状の対比によってドラマティックな効果を生み出している。この作品では素材の埋め込みを行わず、純粋なガラスのみを用いることで、形と色がより決定的な役割を担う。ガラスの中に漂う墨のような暗い形状が透明性の中でうごめき、奥行きと動きを感じさせる。これらの影のようなフォルムは、周囲の光の明るさと強いコントラストをなし、ガラス内部の輝きを際立たせる。影が光の存在を際立たせるように、この作品における暗闇は透明性をより鮮やかにする。この対比が不確かさを生み出し、鑑賞者を作品の内部へと引き込み、見えない何か、もしくは浮かび上がるものを示唆する。それは、知覚の奥に潜む恐れや未知なるものへの問いかけでもある。

この作品における暗闇は、光の欠如ではなく不可欠な存在であり、明瞭さと曖昧さ、透明性と奥行きのバランスを生み出している。矢作は光を単に照らすものとしてではなく、物質の内側に潜む神秘を浮かび上がらせる力として扱い、知覚と変容に関する詩的な瞑想を提示している。

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矢作理彩子

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矢作理彩子(やはぎ りさこ)は、千葉県船橋市出身の日本のガラスアーティスト。奈良大学にてペルシャのササン朝帝国のガラス制作技法を学ぶ。卒業後、東京ガラス工芸研究所に進学し、総合的なガラス制作技術を習得。その後、電気炉を用いるキャスティング技法であるキルンワークに重点を置き、現在はGlass Studio ARGOを主宰している。

 

矢作理彩子の芸術スタイルは、緻密な技法、自然素材の巧みな取り入れ方、そして人生や記憶の根源に迫る哲学的なアプローチによって特徴づけられる。彼女の作品は、鑑賞者に深い思索を促し、物質と光の相互作用を通じて時間や存在の儚さを映し出す。

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