

山元ゆり子
導入
山元ゆり子(Yuriko Yamamoto)は、日本のインスタレーション・アーティスト。1979年9月14日、兵庫県生まれ。2002年に京都精華大学芸術学部を卒業し、同年、最年少でPHILIP MORRIS K.K. ART AWARDを受賞した。
彼女の作品は、従来の空間をダイナミックな環境へと変容させる体験型インスタレーションを中心に展開され、鑑賞者に独自の体験を提供する。日本国内のみならず国際的にも活躍しており、2003年にはMoMA PS1で開催された「First Steps: Emerging Artists from Japan」展に参加した。
山元の作品は、目に見えない感覚や、言葉にしがたい経験、現実世界と人の意識との間に生じる「見えない出来事」を共有する場をつくることから始まります。
私たちの現実はただそこに固定されているのではなく、私たちの知覚によって揺らぎ、変容し続けています。まるで量子の粒子が、観測されることで初めて位置を確定するように、世界は私たちの意識との関わりの中で姿を成しているのかもしれません。
山元は、こうした「意識と現実の共鳴」に関心を持ち、光や音、空間、物語を用いたインスタレーションを多く制作しています。作品は完成されたものではなく、観る者がその場に立ち、歩き、耳を澄ませ、記憶や感情と呼応するとき、初めて成立します。鑑賞者一人ひとりが、その瞬間に「選び取る」世界のかたちは異なり、作品はその選択の数だけ異なる相を見せるのです。
人間の記憶や感情は、物理的な形を持たずとも、時間や空間の中に確かに存在し、私たちの意識のあり方を変化させます。作品世界に足を踏み入れたとき、観る者は自身の記憶や感情と対話しながら、個々の物語を紡ぎ始めるでしょう。それは、言葉になる前の感覚や、ふと立ち止まることで見えてくる何か——日常の奥に潜む、まだ認識されていない世界との出会いでもあります。
この世界に私たちが存在すること自体が、量子的な揺らぎの中で無数の可能性から選び取られた一つの「現れ」であるとするならば、彼女の作品は、鑑賞者がその瞬間に「選び取る」現実の輪郭を可視化する装置とも言えるでしょう。
山元は、作品を通じて、私たちが生きる現実と想像の世界のあわいを行き来する体験をつくりたいと考えています。概念的な出来事に遭遇した時の心揺さぶられる感覚、強い感情が喚起させられる状況、消えてしまいそうな記憶のかけら——そうした様々な小さな感覚をすくい上げ、形にすることで、鑑賞者それぞれの内にある「現実の出来事」に出会う機会になること。それが、彼女の創作の核心にある願いです。
作品






























